「タカシマは聖地である」
琵琶湖は命の源となる水を生み出す母であり、地球の子宮。
京都に生まれ、数々の神社仏閣いわゆるパワースポットを幼い頃から遊び場として育ってきた私の嗅覚を、この地の神秘が刺激する。
滋賀県高島市は琵琶湖の北西に位置し、湖を含めた面積は県下一。(滋賀県の1/6の面積を占める)
そして、琵琶湖に流れ込む総水量の約4割を供給する「源流の郷」である。
その水の恵みを生かした文化、歴史は類い稀なるものだ。
漢字が伝来する以前、縄文~古墳時代にかけ古代文字で記されたという「ホツマツタヱ」が発見されたり、酒造り発祥の地とも云われるほどに古くから発酵文化を伝承してきた。
しかし、ヒネクレモノの私はここでタカシマ賛美をするのではなく、悲しむべき現状について訴えたい。
「うつくしきもの」を愛する植木屋は、いま聖地タカシマの魅力が急速に失われつつある現状を深く憂えている。
移住者として2001年にやってきた「よそ者」ではあるが、この地と琵琶湖に強い愛着を抱いているのだ。
世界に称賛される「かばた文化」は果たして今も息づいていると言えるのか?
美の真贋を見極めるには「みにくきもの」に目を背けてはいけない。
光には影があり、プラスイメージだけでは本当の姿は見えてこない。
汚れた部分を浄化する智慧を生み出すためにも、知っておくべきことがある。
源流に住まう人々には、美しい命の水を守る責務があるはずだから。
いま、琵琶湖の水がどのように汚され、危機的な状況に瀕しているか・・・。
2007年12月、琵琶湖を調査する潜水ロボット「淡探(たんたん)」が湖底に累々と横たわるイサザとスジエビの死体を発見。
採取したイサザからは分析の結果、高濃度のマンガン、ヒ素が蓄積されていることが判明した。
だがその翌年、県は財政的な理由で淡探による湖底調査を中止。
不都合な真実は封印された。
(※その後「認定NPO法人びわ湖トラスト」により淡探の運用は継続。)
滋賀県では1980年代から農業濁水対策事業が始まっている。
農業濁水とは何か?
田植えを行う際、一般的にはトラクターで「代かき」という作業をする。
この代かきによって濁った水は、河川を伝って下流へと流れていく。
農薬、化学肥料、除草剤など、土壌中に堆積された化学物質を含んだ濁水が行き着く先は一つしかない。
1990年代から市場に出回り始めたネオニコチノイド系農薬は、世界的なミツバチ減少の主な原因として、欧米諸国では使用を規制する方向にある。
しかし、日本では何故か基準が緩和され、使用量は増加の一途。
滋賀県でも国の方針に従うだけで、独自の農業政策を打ち出すことはない。
近畿の水瓶、命の水を預かる環境先進県としての自覚は、はなはだ希薄である。
米どころ近江、そこで農薬不使用の米作りに取り組む農家は、わずか数パーセント。
ほとんどが慣行栽培と呼ばれる農薬、化学肥料を使用した米作りだ。
土壌中に長期間残留するネオニコチノイド系農薬の使用割合は、おそらく6割を超えているだろう。
洗っても落ちない浸透性農薬が生態系に与える悪影響は計り知れない。
琵琶湖をめぐるJRの車窓から眺められるのは、見渡すかぎりの田園風景である。
なにも知らなければ、のどかで美しい景色と思えてしまうが、この広大な面積に毎年相当量の農薬が散布されていることを知ると、背筋が寒くなる思いがするばかりだ・・・。
2011年3月11日、東日本大震災により福島第一原子力発電所事故が発生。
自然エネルギーへの転換が叫ばれる中、原発銀座と呼ばれる福井県若狭湾のすぐ隣に位置する滋賀県の政策はどうか?
「原発に依存しない新しいエネルギー社会の構築」は恐ろしく緩やかな速度で進められ、本腰を入れたものとは到底思えない。
2017年、いまタカシマではメガソーラー建設計画の是非が問われている。
森林を破壊して、自然エネルギーを推進するのは本末転倒。
しかもその森林は琵琶湖の水源地であり、古墳など歴史的遺産が眠る土地でもある。
景観を大きく損なうこの計画を止めなければ、我々は次の世代に負の遺産を残すことになるだろう。
琵琶湖は日本の宝、世界の宝。
今、私達がなすべきことは何なのか?
一人一人が、自分にできることを一つでも、直ちに行動に移していただきたい。
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